研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)とユビキチン陽性タウ陰性封入体を有する前頭側頭葉変性症(FTLD-U)で認められる封入体の主要構成蛋白として2006年にTAR DNA-binding protein of43kDa(TDP-43)が同定され,これらの疾患はTDP-43proteinopathyとして認識されるようになっている.神経細胞内のTDP-43の働きは十分に解明されていないが,リン酸化されたTDP-43が神経細胞死と関連していることが示唆されている.今回,我々は2種類のリン酸化TDP-43抗体を作製し,ALS剖検例を免疫組織学的に検討した。本抗体は正常の核を認識せず,ALSの異常構造物のみを認識し,TDP-43 proteinopathyの病態解明に寄与する抗体であると考えられる.ALSでは,運動ニューロン以外に大脳皮質,海馬歯状回,扁桃体,基底核,視床,脳幹,小脳歯状核などの神経細胞,グリア細胞およびneuropilに広く異常構造物が蓄積している症例が認功られ,ALSの病変は従来考えられていたよりも中枢神経内に広く存在することが確認された.また,204例の連続剖検例の左心室と延髄を抗α-synuclein抗体1抗tyrosinehydroxylase(TH)抗体,抗neurofilament抗体を用いて免疫組織学的に検討中であるが,延髄のα-synuclein陽性構造物の出現と心外膜のTH陽性神経線維の減少は関連している所見を得ている.
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