研究概要 |
本年度は主に筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態解明の研究を行った.(1)ラット顔面神経の引き抜き損傷で,顔面核内の神経細胞には高率にGolgi装置の微細化がみられることを明らかにした.(2)新規のTDP-43遺伝子変異(A315E)が認められた家族性ALS1家系を報告した.本家系内には運動ニューロン徴候のみの例,運動ニューロン徴候に加えてパーキンソニズムを呈する例が存在した.病理学的には両者とも脊髄前角細胞の脱落,Bunina小体,およびリン酸化TDP-43(pTDP-43)陽性封入体を運動ニューロン系を中心に認めたが,運動ニューロン徴候のみの例では後索全体および脊髄小脳路の淡明化も認めた.一方,パーキンソニズムを合併した例では黒質の変性が目立ち,同部位にグリオーシス,pTDP-43陽性封入体を認めた.TDP-43遺伝子変異を有する家族性ALSでは家系内での発症年齢,症状にばらつきがみられることが知られているが,病理学的にも違いがあることを初めて報告した.(3)近年,家族性ALS患者の一部でoptineurin遺伝子変異がみられることが報告され,optineurinはALSの特異的なマーカーとなり得るのではないかと考えられている.今回,ALS以外の神経変性疾患で抗optineurin抗体を用いて免疫組織学的検討を行ったところ,optineurinはALSに特徴的な封入体に陽性である以外に,多くの神経変性疾患(アルツハイマー病,パーキンソン病,多系統萎縮症,ピック病,認知症を伴うALS)やクロイツフェルト・ヤコブ病に特徴的な構造物においても陽性であることを明らかにした.(4)ALSに特徴的な封入体であるBunina小体の一部で,免疫組織学的に中間系フィラメントの1種であるperipherinが陽性であるごとを明らかにした.
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