研究課題
【背景と目的】いままでの検討より、神経筋疾患における骨格筋におけるAQP4の発現は、1)再生線維、2)脱神経線維、3)補体系活性化を伴う炎症性筋疾患、の3病態で高度の低下を見せ、発現は機能的に変化することが明らかになった。本年は過去の検討の中で、AQP4発現が高度に低下していた例を選び、その臨床病態背景を臨床像との対比で検討することでAQP4発現を作用する因子を明らかにすることを目的とした。【方法】高度のAQP4発現低下を認めたSLE+Sjogren症候群を合併した筋炎症例1例とアルコール過飲に脊柱管狭窄を合併し高CK血症を認めた神経原性筋の2症例を用いた。SLE+Sjogren症候群に関しては血清中の抗アクアポリン4抗体を測定し、神経原性筋の2症例については臨床像、骨格筋MRI画像、筋病理像を対比検討した。【結果】SLE+Sjogren症候群を合併した筋炎症例1例では血清中の抗アクアポリン4抗体は陰性であった。神経原性筋の2症例は、60歳と68歳の男性で、いずれもアルコール過飲歴があり,腰部脊柱管狭窄によるS1神経根障害を合併しており、安静と禁酒で軽快する可逆性の血清CK上昇を認めていた。増悪期の骨格筋MRI画像ではS1支配筋に骨格筋MRIのDWIで高信号を認め、同時期の生検骨格筋ではAQP4の高度発現低下に加えて慢性神経原性と慢性筋原性の混在像を認めたが間質浮腫はとぼしかった。【考察】SLE+Sjogren症候群を伴う筋炎では抗アクアポリン4抗体は関係していなかった。神経筋疾患における抗アクアポリン4抗体関連症候群の存在を引き続き検索していく必要がある。神経原性筋の2症例の筋ではDWIで高信号を認めており、アルコール、神経原性、運動などによる筋線維の機械的負荷が筋線維上のAQP4発現高度低下に関連している可能性が示唆された。
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