研究課題
パーキンソン病(PD)では多系統の神経系が変性し、運動症状だけでなく多彩な非運動症状も出現することが知られるようになった。しかし、神経変性から臨床症候に至る病態生理は、運動症状ですら不明な点が多い。本研究で我々は、ドパミン神経変性から運動症状に至る病態について検討した。PDの運動症状、特に寡動の病態は、大脳皮質基底核ループの障害モデル(DeLong, Trends Neurosci 1990)によって説明されてきた。トパミン神経変性によって線条体ドパミンが欠乏し、その結果、基底核と前頭葉が構成する回路の機能が障害されて寡動が出現するものと理解されてきた。一方、電気生理学的研究やイメージング研究によって、PDでは補足運動野(SMA)の活動が低下するが、外側運動前野(PM)/京都次運動野(M1)の活動は比較的保たれることが示されている。基底核は直接の運動出力をもたないので、その障害がSMAの機能異常に反映されて寡動が出現している可能性も考えられる。そこで我々は、基底核と前頭葉が構成する回路の中でも、特にSMA-基底核ループの障害と運動症状との関連に注目して検討した。PD患者と健常高齢者を対象として、母指示指対立運動に関わる皮質運動野領域と線条体領域を機能的MRIで同定した。次にトラクトグラフィーを用いて、SMA及びPM/M1の賦活領域と線条体の賦活領域との神経結合を評価した。その結果、PD患者及び健常高齢者共に、SMAと神経結合をもつ線条体領域の多くがPM/M1とも神経結合をもつことが示された。したがってPD患者の線条体ドパミン欠乏は、SMA-基底核ループだけでなく、PM/M1-基底と核ループの機能も同様に障害することが推測された。PDにおけるSMA活動低下の病態を理解するためには、前頭葉-基底核の回路以外の皮質下構造、例えば小脳などの関与も併せて考慮する必要があるのかもしれない。
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