研究概要 |
ジストニアの発現機序として、線条体ドパミン機能異常による淡蒼球の活動性変化が提唱されている。ジストニア患者の脳深部刺激治療の際に淡蒼球外節および内節の神経細胞活動電位を記録したところ、淡蒼球内節の後腹側部において疾患特異的と考えられる"Burst and suppression"パターンの群発活動が得られた。また、刺激電極からのLFP解析では異常活動の導出部位と治療効果がえられる刺激部位が一致することが判明した。DYT3患者も含めたジストニア症例数も20を超え、統計学的解析を含め現在投稿準備中である。また、淡蒼球内節刺激術がMeige症候群のジストニア症状を長期にわたって抑制することを報告した(Parkinsonism Relat Disord, 2011, 17:123-125)。DYT3ジストニアの責任遺伝子DYT3の遺伝子産物であるN-TAF1の単クローン抗体を作成しその脳内局在を同定しその結果は現在投稿中である。また、培養系を用いた機能実験ではN-TAF1発現を低下させると神経細胞は退行変性をきたすことが判明した(投稿準備中)。線条体のドパミン受容体陽性神経細胞(D1細胞)の変性を生じる遺伝子改変モデルの解析では、ジストニア症状の発現時期と一致して線条体ストリオゾーム分画の神経細胞脱落が唯一病変として存在し、D1細胞の変性に伴いD2細胞の機能亢進が惹起されることを見出した。これらの所見はストリオゾームのドパミン機能異常がジストニア発現に関連していること示唆しており現在投稿準備中である。これらの知見に関連して、D1受容体シグナルを伝達するGolfαが線条体ストリオゾーム分画に豊富に発現していることを報告した(Neuroscience 2010, 170, 497-502)
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