研究概要 |
本研究では、電気磁気生理学的手法を用いて,指に刺激を与えることで誘発される脳の反応変化を計測し,非侵襲的にヒト一次感覚皮質における体再現地図の特徴解明をめざしている。脳磁界の皮質反応の解析していたところ、解析範囲を反応が立ち上がりつつある,早い時間帯までひろげる事によってヒトの視床から皮質まで信号が伝播する様子を追跡できる」という興味深い知見を得た。この成果は,2008年にJournal of Neuroscience誌に掲載された(Kimura T, Ozaki I & Hashimoto I, 2008)。この知見は本研究の目的である磁界計測による非侵襲的脳機能評価に対し,大脳深部白質の機能把握を可能にし、研究成果を飛躍的に発展させる可能性を秘めている。なぜなら脳機能マッピングによって大脳の諸領域のはたらきが明らかにされつつある一方,各領域間における情報の相反性伝播やハーモニックな共鳴プロセス自体に,神経系における情報処理の本質を求める立場があるからだ。磁界計測によってヒトの脳幹反応や白質伝播機能がどこまで可能なのか,新たな研究テーマが萌芽しつつある。 隣接する手指の刺激様式(タイミング)の変化によって生じる一次体性感覚皮質反応の変化については,現在解析中である。隣接する手指の刺激タイミングが変わると,600Hz高周波信号成分が著しく減衰または増強する。一方,100Hz以下の低周波成分の変化は少ないことから,高周波成分と低周波成分の発生源は異なると考えられる。異なる手指間での分析を積み重ねている途上であるが、ヒト一次感覚皮質における手指の体再現地図の特徴が明らかにされつつある。
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