本研究の目的は、Parkinson病(以下PD)の早期診断に利用するため、PDの非運動症状の進行プロセスを探ることである。このため、PDの運動症状、感覚症状、社会的認知機能障害、自律神経障害の発症順序を検討した。今年度は、PD例における行動選択過程について追加検討を行った。これまでに、PD患者が「目先の大きな報酬」にとらわれてしまい、「将来の大きな損失」となる選択をしてしまうことを示した。この追加検討として、ギャンブル課題の正負を逆転させた修正版を用いて、「目先の損失」にとらわれず「将来的に得」な選択をすることができるか否かを検討した。結果として、原版課題では先行研究同様、PD群は目先の高報酬のために長期的に高損失となる行動をとった。一方、修正版課題においてPD群は健常者群と同様に有利な山を選択した。これらの結果を合わせると、PD例は高損失だが高報酬が得られる」行動を好むと言え、報酬による行動の促進は損失による行動の抑制を上回っていることが考えられた。この他、PD例における心理推測過程について、情動的な心理推測過程に関する検討を行った。PD例では、視線から他者がどのような心的状態にあるかを推測する過程に困難がみられることが明らかとなった。
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