ヒト膵導管細胞から膵β細胞(インスリン分泌細胞)を分化誘導し、得られたβ細胞を患者に移植する、という糖尿病を「治す」治療法の開発を目指している。 この全体構想の中で平成20年度は米国からよりよい状態のヒト膵導管細胞を入手する方法について検討した。この細胞は、臨床膵島移植の際にヒト膵臓から膵島(移植に使用される)が単離された残りの分画(通常廃棄される)から得られる。 平成20年度中に計16回、細胞を入手したが、輸送時間、輸送中温度、容器、組織量、保存温度などについて充分に検討し改良を加えた結果、実験に使用できるバイアビリティーを保つ条件をほぼ確率できた。 培養した膵導管細胞からβ細胞への分化に及ぼすグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の効果について現在検討中である。予備実験ではGLP-1の投与によりインスリンmRNA量が増加し、分化誘導が促進されている可能性が示唆された。 平成21年度は計4回、細胞を入手することができた。回数が21年度より減ったのは、主に輸入元からの提供が減少したためであり、得られた細胞自体のバイアビリティーは良好であり、実験に使用することができた。 今年度は、1回に得られた細胞で多くの実験が出来るようにするため、培養中にマトリゲル(細胞外基質と増殖因子を含む)を使用し、培養中のバイアビジティーの低下を防ぐ工夫を加え、より多くの細胞をより長く培養することができる様になった。
|