研究課題
【目的】metabolic syndromeのモデル動物であるSHRの原因候補遺伝子産物KAT-1のノックダウン系及び欠損マウスを用い、その生物学的機能を調べる。【方法】KAT-1のRNAiアデノウイルスベクターを作製し、WKYの延髄吻側腹外側野(RVLM)への選択的投与により、延髄でのノックダウンによる解析を行った。また、ES細胞を用いた遺伝子相同組み換えにより開始コドンを含むエクソン1~2の領域を欠失する欠損マウスを作製し、解析を行った。【成績】1)microinjection法により、WKYのRVLM領域におけるKAT-1発現の選択的ノックダウンをwestern blot法とリアルタイムPCR法により確認した。LacZのRNAiに比べKAT-1のRNAiアデノウイルスベクターを投与したWKYでは、2)血圧や心拍数の上昇、24時間尿中カテコラミン分泌の亢進、空腹時血糖値の上昇を認めた。一方、3)欠損マウスの各組織において、KAT-1の発現がmRNAおよび蛋白レベルで欠損していることを確認し、欠損マウスが正常に出産、発育するが、8週齢以降は、4)普通食下において、tail-cuff法およびtelemetryシステム法により有意な血圧と心拍数の上昇を示し、12週間高塩食下および高脂肪食下において、血圧の更なる上昇を示し、この傾向がマウスの交感神経活動が高まる夜間により顕著であることを確認した。さらに、欠損ホモマウスは、5)高塩食下における24時間尿中カテコラミン分泌の亢進を呈し、6)普通食下において、空腹時血糖値の有意な上昇とインスリン負荷試験によるインスリン抵抗性の亢進を示し、高脂肪食下における空腹時血糖値の更なる上昇を示した。そして、7)活動度の増加に伴い、高脂肪食負荷による体重・脂肪組織重量の増加率が減弱し、血清総コレステロール値も減少を示した。【結論】マウスにおいてKAT-1の欠損が血圧の上昇や交感神経活動の亢進、インスリン抵抗性の亢進や糖・脂質代謝異常を引き起こすことが示された。現在、肥満モデル動物、動脈硬化モデル動物との交配により、KAT-1の肥満や動脈硬化への関与について検討中である。
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