A.IRS-2発現・タンパク量調節の分子機序解明 (a)阻害剤を用いた検討により、単離膵島ではおもにCaMKなかでもCaMK-4が、グルコース刺激によるCREBリン酸化やIRS-2の発現に強く関与していることが明らかになった。 (b)優性阻害型ACREB発現アデノを用いた実験で、グルコース刺激によるIRS-2発現が阻害されることから、グルコース刺激によるIRS-2発現上昇にCREBが関与していることが明確に証明された。 B.カルモジュリン依存性キナーゼ(CaMK)の膵β細胞における発現パターンの解析マウス膵島においてはCaMK-4の他にCaMK-2のいくつかのアイソフォームが発現していることが見出された。 C.カルモジュリン依存性キナーゼ(CaMK)ノックアウトマウスの膵β細胞の検討 上記A.の検討からCaMK-4の重要性が示唆された。CaMK-4マウスをDr.Chatila(UCLA)より入手し、実験に供するために繁殖した。CaMK4がCREBのリン酸化を調節するメカニズムが明らかとなったが、複雑な調節に関与していることが明らかとなった。具体的にはCaMK4がCREBのリン酸化を促進するのみならず、他のキナーゼによるCREBのリン酸化はむしろ抑制的に働いていることが示唆された。 D.膵島代償破綻モデルにおける検討 db/dbマウス(BKSバックグラウンド)、ob/obマウス(B6バックグラウンド)のインスリン抵抗性・高血糖時の膵島代償性肥大の有(ob/ob)・無(db/db)に着目し、経時的に血糖を追跡し、膵臓の免疫染色を行った。あわせて経時的に膵島の遺伝子発現を検討し、Pdx1、Glut2、グルコキナーゼなどの遺伝子発現の差異を明らかにした。また、経時的にIRS-2のタンパク量とCREBやCaMK-4のリン酸化状態を検討し、糖尿病発症・増悪時のそれぞれのタンパク量・リン酸かのパターンを見出した。あわせてDNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析などを行い、db/dbとob/obマウスの糖尿病発症パターンの違いに関係している遺伝子を複数見いだした。
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