研究概要 |
<研究目的>本研究は、メタボリックシンドローム(MetS)の基礎病態として、セラミド(Cer)の代謝産物であるスフィンゴシン1リン酸(SIP)に着目し、S1Pとその受容体のアディポサイトカイン分泌への関与とMetSの治療標的としての可能性の探求を目的とする。平成20年度は、1)S1Pとそのアゴニスト・アンタゴニストが炎症性アディポサイトカイン発現分泌におよぼす影響、2)S1P1〜S1P5受容体のサイトカイン分泌への関与、3)S1Pを介した飽和脂肪酸のサイトカイン分泌作用、以上の解明に取り組んだ。<研究方法>S1Pおよびパルミチン酸(Pal)、S1PアゴニストFTY720およびS1P1特異的アゴニストSEW2871、S1P1/3アンタゴニストVPC23019とともにsiRNAを利用して、成熟脂肪細胞からの炎症性サイトカイン分泌に対する効果を検討した。<研究結果>1)成熟脂肪細胞において、S1PおよびFTY720はIL-6、MCP-1の発現・分泌を有意に亢進させた。2)VPC23019は、S1PによるIL-6、MCP-1の発現・分泌亢進を抑制した。3)SEW2871は、IL-6、MCP-1の分泌亢進作用を示さなかった。4)新規方法の確立により、困難とされた成熟脂肪細胞に対するsiRNAの導入で80-40%のノックダウンが可能となった。4)S1P3受容体のノックダウンにより、PalのIL-6、MCP-1分泌亢進作用は約50%抑制された。5)de novo Cer合成酵素の発現抑制は、PalによるIL-6、MCP-1分泌亢進を有意に抑制した。<研究成果の意義>脂肪細胞からの炎症性サイトカイン分泌の亢進は、慢性炎症性疾患としてのMetSの病態として重要である。本研究成果により、S1Pが脂肪細胞からのIL-6, MCP-1分泌を促進し、高脂肪食のMetS増悪作用の一部はSIP受容体を介している可能性が示唆された。
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