研究概要 |
<研究目的>本研究は、メタボリックシンドローム(MetS)の基礎病態として、セラミドの代謝産物であるスフィンゴシン1リン酸(S1P)に着目し、S1Pとその受容体のアディポサイトカイン分泌への関与とMetSの治療標的としての可能性の探求を目的とする。平成21年度は、前年度の知見を基礎に、S1P受容体(S1P1~S1P5)のいずれがアディポサイトカイン分泌に関与するかをさらに検討し、また飽和脂肪酸のアディポサイトカイン分泌作用におけるS1P受容体の役割を検討した。<研究方法>S1Pおよびパルミチン酸(Pal)存在下で、S1P2特異的アンタゴニストJTE013、S1P1特異的アンタゴニストW146およびS1P1-siRNAを利用して、3T3-L1脂肪細胞からの炎症性アディポサイトカイン分泌に対する効果を検討した。<研究結果>1)成熟脂肪細胞において、S1PによるIL-6、MCP-1の発現・分泌亢進に対して、S1P2特異的アンタゴニストJTE013は抑制効果を示さなかった一方、S1P1特異的アンタゴニストW146はこれを部分的に抑制した。2)Palの炎症性サイトカイン分泌促進作用に対しても、JTE013は抑制を示さず、W146はわずかに抑制効果を示した。3)S1P3受容体のノックダウンにより、S1P, PalのIL-6、MCP-1分泌亢進作用が抑制されたが、S1P1受容体のノックダウンでもこれらのサイトカイン分泌はわずかに抑制された。<研究成果の意義>脂肪細胞からの炎症性サイトカイン分泌の亢進は、慢性炎症性疾患としてのMetSの病態として重要である。本年度の研究成果により、S1Pの炎症性アディポサイトカイン分泌促進機序として、主としてS1P3受容体が関与しており、飽和脂肪酸のアディポサイトカインに対する作用の一部も同受容体を介している可能性が示唆された。
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