研究概要 |
本研究では、福岡県久山町の地域住民における追跡調査の成績で、GWASで同定されたSNPsと糖尿病発症の関係を検討した。2002年に久山町の健診で75g経口糖負荷試験を受けた40-79歳の住民のうち糖尿病がない2,109名(男性846名,女性1,264名)を対象とした。インベーダーアッセイにてADAM30, ADAMTS9, CDC123, CAMKID, CDKAL1, CDKN2A/2B, DCD, ENPP1, EXT2/ALX4, FTO, FLJ39370, G6PC2-ABCB11, HNF4A, IDE/KIF11/HHEX, IGF2BP2, INS, JAZF1, KCNJ11, KCNQ1, LOC387761, MTNRIB, NOTCH2, NRF1, PKN2, PPARG, RAPGEF1, SLC30A8, TCF7L2, TP53, TSPAN8/LGR5, VEGFA, WFS1上のSNPsを測定した。7年間の追跡によって214名の新規糖尿病発症をみた。性・年齢調整後に糖尿病発症と有意な関連を示すSNPsはCDKAL1, CDKN2A/2B, DCD, FTO, KCNQ1上に存在した。この5つのリスク多型の合計数で0-4個,5個,5-6個,7個以上の4群にわけると,糖尿病発症の相対危険は,多変量調整後0-3個に比べ,4個で1.75(95%信頼区間1.26-2.43,P<0.001),5-6個で2.17(95%信頼区間1.55-3.04,P<0.001),7個以上で3.27(95%信頼区間1.50-7.13,P=0.003)と有意に上昇した。ROC(Rceiver Operatorating Characteristic)の曲線解析によって曲線下面積を比較すると,上記の調整因子のみのモデル(0.714)に比べ,リスク多型数を含むモデル(0.733)では有意に曲線下面積が大きく(P=0.03)糖尿病発症の予測能が高かった。さらに年齢(40歳-54歳,55歳以上),性,BMIレベル(23kg/m^2未満,23kg/m^2以上),飲酒,喫煙,余暇時の運動の有無で層別を行うと,年齢に交互作用を認め,55歳以上の群に比べ40-54歳の群ではリスク多型の合計数と糖尿病発症の関係が有意に強かった(P<0.005)。
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