研究概要 |
申請者らは糖尿病血管合併症発症機序として「高グルコースによるミトコンドリア由来活性酸素(mtROS)過剰産生」の意義を提唱している。またmtROSの特異的除去酵素であるMnSODを内皮細胞特異的に発現させたトランスジェニックマウスを新規作成した。本年度は主に、以下の1〜4を行った。 1.コントロールマウスに糖尿病を導入すると、腎組織で8-OHdGの増加を認めた。また8-OHdGの増加は細胞質が中心であった。8-OHdGはDNAの酸化修飾を検出するマーカーであり、糖尿病マウス腎において、核ではなく細胞質に8-OHdGの増加を認めたことは糖尿病によるmtROS増加誘導を示唆するものと思われた。 2.MnSODトランスジェニックマウスに糖尿病を導入すると、腎組織での8-OHdGの増加は認められなかった。糖尿病がmtROS増加を引き起こし、本マウスのMnSODがこのmtROSを抑制することが確認された。 3,コントロールマウスに高酸素負荷(未熟児網膜症モデル)を行い、網膜組織切片を作成したところ、網膜より硝子体側に突出する細胞群(新生血管)が認められた。一方MnSODトランスジェニックマウスではこの現象は約73%抑制されていた。 4.mtROSを標的とした糖尿病合併症新規治療法開発のため、培養血管内皮細胞を用い、ピオグリタゾンによるmtROS抑制作用を検討した。ピオグリタゾンは高ググルコースによるROS産生を濃度依存的に抑制すること、またmtROSを抑制すること、PGC-1α、MnSOD mRNA増加を誘導することを確認した。 以上より、本年度はmtROSと糖尿病腎症・未熟児網膜症の関連をMnSODトランスジエニックマウスにて検討し、明らかにするとともに、ピオグリタゾンによるmtROS抑制作用を培養血管内皮細胞を用い、検討し、明らかにした。
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