Senescence Marker Protein-30 (SMP30)の減少が臓器障害の閾値を低下させ高齢者における臓器障害の背景になることが示唆されている。今回、SMP30の糖代謝における役割を検討した。<方法>雄SMP30欠損マウス(KO)および野生型マウス(W)に7週令から高脂肪食(HFD)もしくは通常食(CD)を投与。15週令(投与8週)で耐糖能障害の解析、膵島の組織・形態学的検討を行った。またCD投与群で単離ラ氏島を用いた分泌実験、ATP含量測定をおこなった。<成績>糖負荷試験でKOの負荷後30分血糖値が有意に高値であり同インスリン値は有意に低値であった。インスリン負荷試験でKOのインスリン感受性はWよりも良好であった。KOは膵HE染色、膵インスリン含量、β-cell mass、膵ランゲルハンス島細胞増殖(BrdU index)に差を認めず、HFDによるこれらの代償性増加はWと同様であった。単離ラ氏島を用いての分泌実験ではグルコース、塩化カリウム刺激インスリン分泌はKOで有意に低下していた(P<0.05)。一方、グルコース刺激下ATP含量に差はなかった。<結論>インスリン分泌機構の抹消レベルでの障害による早期グルコース刺激インスリン分泌障害がSMP30ノックアウトマウスにみられる軽度耐糖能障害の原因と考えられた。SMP30の減少が加齢に伴う膵β細胞の機能障害(インスリン分泌障害)の原因となる可能性が示された。また、SMP30の減少は、現在増加している高齢糖尿病の一因として寄与する可能性がある。
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