平成20年度末現在、本研究課題の実績概要は以下のとおりである。 2型糖尿病、高血圧、高脂血症を合併する2型糖尿病1528名と健常対象者439名において、超音波法により頸動脈の早期動脈硬化の形態的変化であるintima-media thick ness (IMT)および血管弾性機能であるstiffness parameterβについて評価し、両者と冠動脈疾患合併との関連性について比較検討をおこなった。冠動脈疾患については、冠動脈造影、心筋シンチグラフィー、心電図などにより診断した。IMTおよびstiff ness parameterβは、健常対象者に比較して、年代別に調整して冠動脈疾患非合併糖尿病、冠動脈疾患合併糖尿病の順に高値を示した(p<0.001)。多重ロジスティック回帰分析では、IMT高値群(1.30mm以上)の冠動脈疾患合併に対する年齢・性・血圧・糖尿病有無の多因子調整後オッズ比は2.21(p<0.001)、Stiffness parameter高値群(20以上)のオッズ比は1.55(p<0.05)と有意に関連した因子であることが示された。さらに、両者が高値を示した場合の多因子調整オッズ比は3.115(p=0.0001)とIMT、stiffness parameter各々の単独のオッズ比より明らかに高値を示した。 本知見により、メタボリックシンドロームの構成である糖尿病、高血圧、高脂血症を示す対象において頸動脈の早期動脈硬化性病変を形態的変化と機能的変化の2面性より同時に定量評価診断することにより、単独評価診断よりもより強く冠動脈疾患合併との関連性を検出しうることが多数例の検討により明らかとなった。
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