(目的)我々は以前より、骨髄移植により膵β細胞容積が増加する現象を確認している。そして、本研究にて、骨髄移植による膵β細胞容積増加のためには、膵β細胞に発現するVEGF-Aが必須であるという結果が得られた。この事実を基に、本年度は、VEGF-Aがより、一般的な膵β細胞容積増加の刺激因子であるインスリン抵抗性の代償機構としての膵β細胞容積増加にも必須であるか否かを検討する。 (方法)高脂肪食負荷で、インスリン抵抗性を誘導することにより、膵β細胞容積が増加することが知られている。この反応にVEGF-Aが必須であるか否かを解明する目的で、まず8週齢の膵β細胞特異的VEGF-AノックアウトマウスおよびコントロールのVEGF-A^<flox/flox>マウスに60%高脂肪食を負荷し、負荷後のマウスの耐糖能を調べるとともに、免疫組織染色を用いて膵島領域のCD31(血管内皮細胞マーカー)陽性領域の面積を定量し、さらに、膵β細胞容積を定量評価した。 (結果)コントロールマウスでは高脂肪食により、膵ラ氏島内の血管内皮細胞数が増加し、膵ラ氏島容積が増加した。一方、VEGF-Aノックアウトマウスでは高脂肪食により、膵ラ氏島内の血管内皮細胞数の増加は不良であったが、膵ラ氏島容積は増加した。 (結論)骨髄移植刺激とは異なり、一般的に認められるインスリン抵抗性誘導性の膵β細胞容積増加現象には、VEGF-Aはではないと考えられた。
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