研究概要 |
1型糖尿病と2型糖尿病の共通の遺伝的基盤の同定を目的とし、SUMO4遺伝子が1型糖尿病(Diabetes,2005)および2型糖尿病(J Clin Endocrinol Metab, 2007)両者に対する共通の疾患感受性遺伝子であることについての報告を邦文総説にて報告した(近畿大学ライフサイエンス研究所年報、2008)。また新たに本邦において自己免疫疾患(関節リウマチ、SLE、自己免疫性甲状腺疾患)との関連が報告されたFCRL3遺伝子の3つの一塩基多型について1型糖尿病疾患感受性との関連解析およびメタ解析をおこない、有意な関連を示さないことを報告した(第45回日本臨床分子医学会学術集会、2008)。したがってFCRL3遺伝子は1型・2型糖尿病の候補遺伝子から除外されると考えられた。また、欧米の全ゲノム関連解析によって同定された1型糖尿病疾患感受性遺伝子のうちIL2RA遺伝子,12p13領域、16p13領域、Vitamin D receptor遺伝子と日本人1型糖尿病との関連解析にて有意な関連を見出し報告した(JCEM[in press],JCEM 2009, J Autoimmun 2008)。今後各遺伝子と2型糖尿病の疾患感受性との関連を検討する予定である。また、1型糖尿病モデルマウスであるNODマウスのコンジェニック解析により、疾患感受性遺伝子座の同定・限局を行いその成果を第23回日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会のワークショップにて報告した。さらに分担研究者である馬場谷が2型糖尿病モデルマウスであるNSYマウスのコンジェニック解析の成果を、第22回国際哺乳動物ゲノム学会および第23回日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会にて発表した。また、2型糖尿病モデル動物Db/Dbマウスの膵β細胞特異的に抗酸化物質であるチオレドキシンを過剰発現したマウスでは糖尿病発症を抑制することを見出し(Antioxid Redox Signal.2008)、1型糖尿病モデル動物であるNODマウスの膵β細胞特異的にチオレドキシンを過剰発現させたモデルにおいて糖尿病発症抑制したこと(Hotta M et al. J Exp Med. 188: 1445-51, 1998)と併せて、1型・2型糖尿病の共通のメカニズムでβ細胞障害が生じている可能性を証明した。
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