CCNファミリーは、CYR61(CCNl)、CTGF(CCN2)、NOV(CCN3)、そしてWISP-1、2、3(CCN4、5、6)からなる一群の分子であり、細胞の増殖、分化、接着、運動に関わり、生体において創傷治癒、組織の線維化、炎症や血管新生への寄与が想定されている。このうちCYR61とCTGFは、糖尿病モデル動物の網膜で、終末糖化産物AGE依存的にその発現を増すことが報告されている。またCTGFは、腎臓においても糖尿病状態で発現が上昇し、組織の線維化に関わることが示唆されている。これに対し、その他のCCNファミリー分子の機能はこれまでほとんど知られていなかった。我々は、CCN3/NOV(Nephroblastoma OVerexpressed)に着目して検討を行なった。NOVに対する特異抗体を用いた免疫組織染色の結果、この分子は大動脈中膜平滑筋細胞に高発現することが分かった。そこで、リコンビナントNOV蛋白を用い、培養平滑筋細胞に対する生物学的作用を検討したところ、NOVは血清によるDNA合成および細胞遊走をそれぞれ有意に抑制した。この増殖抑制作用は細胞周期調節タンパクp21の発現上昇を伴なっていた。NOVノックアウトマウスの検討では、大腿動脈における内皮傷害後の内膜肥厚変化が野生型マウスに比べ有意に増強していた。したがって、NOVは平滑筋細胞に作用し、内膜肥厚抑制的に働くものと推察された。一方、平滑筋細胞におけるNOVの発現は、1型糖尿病マウス大動脈中膜において低下していたことから、NOV作用の減弱が動脈硬化促進病態における血管障害の形成に関わっている可能性が示唆される。
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