研究概要 |
本年度は、昨年度in vitroでの発現検討を行ったABCG5,ABCG8,NPC1L1について、in vivoで肝臓に発現させることにより、その発現蛋白の特徴および生理的役割について検討した。まず、ヒト小腸型ABCG5(iG5),ヒト肝臓型ABCG5(hG5)をコードするアデノウイルスをABCG5/8ダブルノックアウトマウスに感染させたところ、HepG2細胞でみられた蛋白(iG5約70kDa,hG5約55kDa)の他に、hG5,iG5ともにほぼ同じ分子量のより小さい(約50kDa)蛋白を認めた。また、iG5,hG5をそれぞれABCG8(G8)と共発現させると、ともに成熟化(糖化)されていた。今回の結果より、in vivoではABCG5,ABCG8は、単層培養のHepG2とは異なる動態を示す可能性が示唆された。また、予備検討の結果からではあるが、hG5+G8の発現に比較しiG5+G8発現は胆汁中コレステロール濃度が低く、コレステロール排泄能において劣る可能性が示唆された(hG5+G8 22.8μmol/ml vs iG5+G86.0μmol/ml)。現在ABCG5/8ダブルノックアウトマウスを繁殖させ、さらなる検討を行っている。 NPC1L1に関しては、ヒトNPC1L1をC57BL6マウスの肝臓に発現させると、NPC1L1が毛細胆管に沿って発現すること、胆汁中のコレステロールが減少することが判明した。このことより肝NPC1L1は胆汁からコレステロールを再吸収していることが示唆された。また、LDLとHDLの中間の大きさの、アポEに富んだリポ蛋白が出現することも判明した。このリポ蛋白は、NPC1L1の阻害剤であるエゼチミブを投与することにより抑制された。また、遊離コレステロール、リン脂質に富み、アガロース電気泳動でα位に泳動されることから、HDLに近い性質を有する、と考えられた。
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