研究課題/領域番号 |
20591081
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
村尾 孝児 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (20291982)
|
研究分担者 |
石田 俊彦 香川大学, 医学部, 教授 (50159737)
井町 仁美 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (80380187)
大森 浩二 香川大学, 医学部, 准教授 (00263913)
|
キーワード | HDL受容体 / SR-BI / CLA-1 / 糖尿病 / 高血糖 / p38-MAPK pathway / Sp1 / Fox01 / 血管内皮細胞 |
研究概要 |
糖尿病は、動脈硬化性疾患発症の最も重要な危険因子であるとされている。また糖尿病患者においてはHighdensity lipoprotein(HDL)コレステロールが低下し、HDL代謝異常が指摘されている。我々はヒト遺伝子CLA-1が、マウスSR-BIのホモログとしてヒトHDL受容体であることを同定してきた。現在までに我々はSR-BI/CLA-1の機能として、コレステロール逆転送系を介して動脈硬化に関与すること、アポトーシス細胞を認識し生体内防御に関与すること、細胞増殖、血管内皮細胞における血管弛緩因子(NO)の産生亢進を示し、SR-BI/CLA-1が様々な生命現象を仲介する多機能性受容体であることを提唱してきた。今年度の研究は、糖尿病(高血糖状態)が惹起するHDL代謝異常をHDL受容体SR-BI/CLA-1の観点から検証した。 1、高血糖状態におけるSR-BI/CLA-1の抑制 肝細胞におけるSR-BI/CLA-1の発現は、血糖値に応じて低下することが判明した。この高血糖による抑制はSR-BI/CLA-1の転写レベルで認められた。このメカニズムは、細胞内情報伝達系p38-MAPK pathwayおよび転写因子Sp1の活性化、Sp1によるSR-BI/CLA-1の転写抑制を介していた。さらには細胞からコレステロールをくみ出す分子ABCA1も同様の機序により抑制された。糖尿病モデル動物を使用した検討では、高血糖状態では肝臓におけるSR-BI/CLA-1が低下した。 2,高血糖による血管内皮機能障害とSR-BI/CLA-1 糖尿病による動脈硬化発症の一つの機序として、血管内皮細胞障害が提唱されている。糖尿病による高血糖、レニン-アンギオテンシン系の亢進は、血管弛緩因子である一酸化窒素(NO)の産生低下を惹起することが指摘されている。SR-BI/CLA-1は血管内皮細胞に発現しており、NO産生を促進する。我々は、HDLによるNO産生酵素(NOS)の活性化がSR-BI/CLA-1のC末端を介するPI3-K/Akt pathwayによることを報告した(Hypertension2007)。高血糖は、血管内皮細胞におけるSR-BI/CLA-1遺伝子発現を抑制した。高血糖によるSR-BI/CLA-1抑制は、転写レベルではFox0の不活性化(リン酸化)がSR-BI/CLA-1の転写調節に関与することが示唆された。
|