研究概要 |
In vivoとin vitro研究の2系で、アクアポリン-2(AQP-2)水チャネルの調節系について検討を行ってきた。In vitro研究では、低浸透圧におけるAQP-2promoter活性の検討を行った。AQP-2遺伝子5'上流域には、cAMP反応部位(CRE;-310〜-304bp)と浸透圧反応部位(TonE;-570〜-560bpと、新しいTonE(-6.1kb〜-4.3kbに存在))がある。マウスAQP-2遺伝子5'上流域を-9,5kbまでクローニングして、-9.5,-6.1,-4.3,-1.1,-0.36kbまでの種々のconstructsを作成して、PGL-3basic vectorのルシフェラーゼ(Luc)遺伝子上流に組み込んで、AQP-2遺伝子とともにmIMCD細胞に共発現した。Luc活性は低浸透圧培地(225mmol/kg)に孵置しても等張培地(300mmol/kg)下と差異を認めなかった。5μmol/l dibutyryl cAMP(DBcAMP)で細胞を24時間孵置すると、Luc活性は225%増加したが、低浸透圧培地下では127%の増加にとどまった。同様の成績は、低浸透圧培地(225mmol/kg)に過剰の尿素を加えた等張培地でも認められた。これらの結果は、-9.5kb,-6.1kb,-1.1kbのAQP-2promoterいずれでも同様であったことから、TonE(-570〜-560bp)が関わることが示唆された。さらに、dominant-negative TonEを用いてDBcAMPに対するAQP-2promoter活性を調べると、低浸透圧によるAQP-2promoter活性の抑制は解除された。また、-0.36kbのAQP-2promoterでは低浸透圧によるLuc活性の抑制は認められなかった。したがって、低浸透圧下ではcAMPによるAQP-2の転写調節が減弱するため、集合尿細管細胞における水の再吸収が減退するものと想定される。この成績は、in vivo SIADHラットで示唆されたAVP過剰状態におけるAVP escape現象の発現に関わる生理的現象と考えられる。 In vivo研究では、くも膜下出血モデルの作製を開始した。体重250-300gの雄性SDラットをウレタン麻酔下で気管内挿管して左内頸動脈からカテーテルを挿入して脳内血管に損傷を引き起こし、くも膜下出血モデルを作製する。手術手技が煩雑のため、完成したモデルラットの作製までにはまだ時間を要する段階である。プレレミナリーに手術、覚醒後48時間までのメタボリックスタディをスタートした。血清Na、血漿浸透圧、血漿AVP濃度を測定し、sham群との対比からSIADHの病態ができ上がるか検討中である。
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