研究概要 |
【目的】新規血管作動性物質ウロテンシンII(UII)は培養ヒト単球マクロファージの泡沫化を促進する(Hypertension2005)。また高血圧患者の血中UII濃度は頸動脈硬化の進展度と相関する(Am J Hypertens2007)。今回アポE欠損マウスを用いて、 UIIの動脈硬化促進作用を検討した。さらに糖尿病性網膜症患者の血中UIIレベルを測定し、網膜症の重症度との相関を検討した 【方法】(1)動物実験;9週齢のアポE欠損マウスに高脂肪食を負荷するとともに、 UIIを4週間慢性持続投与し、大動脈硬化病変面積を測定した。腹腔炎症性マクロファージの酸化LDLによる泡沫化(コレステロールエステル蓄積)、ならびにこれに関連する遺伝子発現を検討した。(2)臨床研究;健常対照者(n=24)、網膜症のない糖尿病患者(n=36)、単純型糖尿病性網膜症患者(n=16)、増殖型糖尿病性網膜症患者(n=16)の血中UII濃度を測定した。 【結果】(1)動物実験;UIIを投与したアポE欠損マウスの動脈硬化病変面積は対照群に比し8倍に増加した。腹腔マクロファージの泡沫化、コレステロールエステル化酵素(ACAT1)、酸化LDLを認識するスカベンジャー受容体(SR-A, CD36)の発現はUII投与により有意に増加した。 (2)臨床研究;血中UII濃度は、健常対照者(2.4ng/mL)、網膜症のない糖尿病患者(14.7ng/mL)、単純型糖尿病性網膜症患者(23.5ng/mL)、増殖型糖尿病性網膜症患者(32.0ng/mL)と段階的に増加した。 【結論】モデル動物におけるUIIの動脈硬化促進作用が明らかとなった。また、糖尿病性綱膜症の病勢を示すバイオマーカーとしてUIIが有用である可能性が想定された。
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