本年度は11名の高コレステロール血症患者に対してスタチン投与前後でkinetic studyを実施した。ベースラインでの脂質値はTC/TG/HDL/LDL=249±30/152±68/46±9/173±31であったが、ピタバスタチン2mgあるいはロスバスタチン2.5mg/日8週間投与によって、TC/TG/HDL/LDL=161±19/112±40/47±11/92±17と、LDL-Cは47%と著明に減少した。ベースラインでのLDLアポ蛋白Bの異化速度(fractional catabolic rate FCR)は0.400±0.144pools/dayであったのに対してsmall dense LDLアポ蛋白BのFCRは0.265±0.090pools/dayと34%低下していた。すなわち著明な異化遅延を認めた。より長期間血中に滞在するということはその間に酸化修飾を受け易いという事であり、動脈硬化惹起性を強く示唆する。スタチンを投与した前後で解析をした6名のデータでは、LDLアポ蛋白BのFCRは0.262±0.509±.0157pools/dayへ、small dense LDLアポ蛋白B FCRは0.186±0.045pools/dayから0.309±0.059pools/dayへと、それぞれ94%、67%と有意に増加した。従って、スタチンによるLDL受容体活性の亢進によって、small LDLを含めたLDL全体の異化障害の改善効果をもたらしたと考えられる。また、フィラート系薬剤もsmall dense LDL減少作用が認められており、small dense LDL代謝に及ぼす影響を検討するため合計4名の高TG血症患者に対してベザフィブラート8週間投与前後で同様のkinetic studyを実施した。現在結果解析中である。
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