平成21年度までに得られた、ラット及びヒト正常下垂体およびヒト下垂体腺腫の開口分泌の可視化による基礎的解析により、正常GH細胞ではGHRHやhighKなどの刺激によって主にfull fusionの形式の開口分泌が生じるのに対し、機能性腺腫であるGH産生腺腫では刺激なしにGHの自発顆粒分泌が生じることが明らかになった。本年度は、これらの研究を進めるとともに、これらの解析が臨床医学に応用可能であるかを研究した。対象として多数のGH産生腺腫を用い、その自発顆粒分泌を解析することで、これらの腺腫の機能的特徴を明らかにできないかを研究した。51例GH産生腺腫の自発分泌を2光子励起法により解析しその存在を証明し、腫瘍ごとの自発分泌の違いをもたらす病理学的特徴を検討した。fibrous body、gsp変異の有無、および臨床データとの関連についても解析中した。51例中21例に自発分泌を認めた。自発分泌のなかった30例中highKの効果を見た30例中24例で顆粒分泌があった。 いずれも数秒以内の短いfull fusionであった。自発分泌の有無と病理所見、GH/IGF1基礎値、gsp変異の有無には一定の関連はなく、複雑な要因が関与していると考えられた。Hardy分類でgrade Iの腺腫はすべて自発分泌があり、腺腫が小さい場合は自発開口分泌が観察される可能性が考えられた自発分泌の見られる腺腫はすべて高Kにより分泌が促進された。分泌が著明に促進される腺腫8例はすべてdensely granulated adenomaであった。分泌促進は85p変異のある腺腫で有意に多く見られた。また内科治療薬のソマトスタチンアナログやD2アゴニストの自発分泌抑制効果が臨床効果と強く相関することも示された。自発分泌の解析により腫瘍の内分泌的特徴を明らかにでき、治療選択に結びつけることも可能であることが明らかになった。
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