本研究では核内受容体GRによる抗炎症作用メカニズムを解析することによる新しい創薬標的の同定の可能性を模索しているが、本年度は様々な機能制御による抗炎症作用制御の可能性を検討した。まず、エピゲノミックは制御として、GRによるAP-1に対する転写抑制メカニズムに焦点を絞って解析を行ったが、その結果GRを介するグルココルチコイド依存性のAP-1タンパク(c-Jun)のSumo化がこの転写抑制のスイッチの役割を果たしていることを明らかになった。さらにそのSumo化を契機としてSumo化されたAP-1タンパクを認識する形でヒストンH3K27をメチル化するヒストンメチル化複合体PRC2複合体の構成因子EZH2がリクルートされることを明らかにすることができた。一方で、GRタンパクの分解をリガンド依存性のGRタンパクの分解を制御する因子とリガンド非存在下のGRタンパクの分解制御を行う因子を生化学的に同定することができた。この因子群の機能によりGRにょる転写抑制の強弱が制御されていることも確認できた。これらの因子は、タンパクのターンオーバーによる制御を司っている可能性があり、エピゲノミックな制御との連動性についての解析が注目される。また、両者を制御しているGRやAP-1などのタンパク修飾を明らかにすることによってさらなる制御機構が明らかになると考えられる。実際、GRの炎症シグナル依存性のリン酸化がGRタンパクの分解制御に重要であることを明らかにしており、今後は網羅的な検索を必要としている。
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