研究概要 |
特定の下垂体細胞が特定のホルモンのみを産生するという細胞特異的ホルモン産生機構はまだ明確ではない。私どもは、Pit-1存在下にプロラクチン(PRL)遺伝子の発現を増強させる転写因子としてmPOUをクローニングした。mPOUが、PRL産生以外のPRL産生細胞の特性をも決定する因子かどうか明らかにすることは重要である。PRL産生細胞はGH産生細胞に由来するが、PRL産生下垂体腫瘍は薬物治療可能であるのに対し、GH産生下垂体腫瘍は治療困難であることが多い。実際に、mPOUがPRL産生のみでなく、PRL細胞への分化を促進する因子であるならば、その発現を人為的に促進する方法の開発は、薬物治療可能な腫瘍への分化誘導療法に結びつく可能性を秘めている。 本年度は、次の成績を得た。1.免疫組織化学法で、mPOUはPRL・成長ホルモン(GH)産生細胞株に存在すること、ACTH産生細胞に存在しないことを明らかにした。2.Brn-5(mPOUのrat ortholog)RNAiにより、内因性Brn-5はラットPit-1,PRL遺伝子発現を促進することを明らかにした。3.Emb(mPOUのmouse ortholog)ノックアウトマウスの作製を試みたが、作出できていない。4.mPOUと同様にPit-1発現を促進する転写因子であるProp1の作用機構を解析し、mPOUとProp1のインターアクションを検討した。5.Prop1に結合する因子AESを単離した。 今後さらに、mPOUが下垂体細胞分化、およびPRL産生腫瘍発生にはたす役割について明らかにしたい。
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