研究概要 |
卵胞に発現するBMPは、共通して顆粒膜細胞での卵胞刺激ホルモン(FSH)によるprogesterone産生を抑制する黄体化抑制因子の特徴をもち、卵胞期におけるFSH刺激に対する未成熟排卵の抑制に寄与する。しかし、同じくFSHにより誘導されるaromatase活性とestradiol産生に対する作用については各BMPリガンドにより異なった作用を発揮する。平成20年度の研究では顆粒膜細胞のestrogen産生能に着目して卵胞顆粒膜細胞におけるステロイド合成調節機序について検討した。ラット顆粒膜初代培養細胞において、MAP kinase阻害薬を用いた検討により、ERK1/ERK2の活性化はestradiol産生を抑制し、p38-MAPKの活性化はestradiol産生を促進することが示された。顆粒膜細胞由来のBMP-2と莢膜細胞由来のBMP-4は、activinと同様にFSH-p38シグナルの増強により顆粒膜細胞でのestradiol産生を促進し、一方でFSHによるcAMP-PKAシグナルを抑制してprogesterone合成を減少した。また莢膜細胞由来のBMP-7は、FSHによるERK1/ERK2のリン酸化を抑制してestradiol産生を増加した。さらに卵母細胞との共培養では、FSHによる顆粒膜細胞でのMAP kinase活性化が増幅され、BMP-2, -4, -7によるestradiol産生がさらに増幅されることも明らかとなった。このように卵胞に発現するBMPは、共通するprogesterone産生の抑制作用に加えて、リガンド依存性にMAP kinaseを制御することにより、卵母細胞との細胞間連携を介してestrogen産生に促進的に作用することが明らかとなった。さらに現在は、卵母細胞と顆粒膜細胞間のcell-to-cell communicationの中で、BMPのparacrine作用に寄与する卵母細胞因子を二次元電気泳動を用いて同定中であり、estrogen処理により特異的に発現の変化する卵母細胞因子について探索を進めている。
|