研究概要 |
初年度の研究において我々は、以下の検討を行った。 1.ミネラロコルチコイド受容体(MR)を発現する細胞株の探索 MR依存性転写を解析するにあたり細胞内に内因性MRを発現しているか否かを明らかにすることが重要である。そこで米国ミシシッピ大学のゴメスサンチェス教授より供与された特異性の高い抗MR抗体を用いて各種細胞株を解析したところ、神経細胞株BE(2)CがMRのみを特異的に発現、また血管平滑筋細胞株A10がMR,GRとも発現していること、さらに大腸上皮細胞株T84はMR,GRとも発現していないことを、Western Blotting法により確認した。 2.MR依存性転写に影響を及ぼす細胞内グルココルチコイド代謝酵素の発現解析 MRリガンドであるアルドステロンがMRを介して作用するためには、コルチゾール不活化酵素11βHSD2が同時に発現している必要がある。そこでA10細胞における11βHSD1、2の発現を検討したところ、本細胞は11βHSD2のみならず11βHSD1も同時に発現していること、またTNFαなどの炎症刺激により11βHSD1の発現は上昇、逆に11βHSD2の発現は低下することが明らかとなった。したがってA10細胞はコルチゾールを不活化しアルドステロンが特異的に作用しうる細胞内環境を有していないことが示された。また独自に開発した細胞内グルココルチコイドバイオアッセイ系を用いて評価した結果、炎症刺激は実際に細胞内でコルチゾンをコルチゾールに活性化させる方向に作用することを見出した(Tsugita M, Iwasaki Y, et al. Life Sciences83:426-432,2008)。
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