研究概要 |
2年目にあたる平成21年度に私どもは研究課題に関連する2編の英文原著論文を出版した。 1.脳内副腎コルチコステロイド作用の分子機序:脳内にはミネラルコルチコイド(MR)およびグルココルチコイド受容体(GR)が広範に発現している。我々は、鉱質コルチコイド作用を有するコルチコステロンがラット視床下部で転写因子FosBの発現に抑制的に作用していることを、in vivoおよびin vivoの系を用いて明らかにした(Das G, Iwasaki Y, Itoi K, et al, J Neuroendocrinol 2009 ; 21 : 822-831).この結果より、脳内GR,MRは誘導型転写因子の発現を介して生体のストレス制御系に重要な役割を果たしてると考えられた。また我々は昨年、脳内におけるGR,MRの過剰刺激がグルタミン酸NMDA1受容体の過剰発現を招来し、神経細胞死を惹起することを明らかにしている(Jing H, Iwasaki Y. et al.).すなわち中枢神経系においてGR,MRは中枢神経機能維持に不可欠である反面、過剰刺激は細死亡などの臓器障害を招来することを示した。 2.GRの構造機能相関:糖質コルチコイド受容体には複数のアイソフォームがあり、ステロイド抵抗性への関与が推察されているが、その分子機序は明らかでなかった。我々は主要なアイソフォームであるGRβおよびGRγが、ステロイドホルモン作用のうち主として免疫系で機能する転写抑制に対し選択的にdominant negative作用を発揮することを始めて明らかにした(Endocrinology, 2010, in press).この結果は、臨床でしばしば問題となるステロイド不応性疾患の病態解明に貢献することが期待される。
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