1. ラロキシフェンで誘導される内在性エストロゲン受容体(ER)の核小体移行 昨年度までの研究で、乳癌細胞株において、ラロキシフェンがERを核小体へ移行させることを明らかにした。これまでの実験は、ER-GFPを細胞内で過剰発現させて行ったものなので、内在性のERがラロキシフェンによって核小体に移行するかどうかを、抗ER抗体を用いた免疫染色を行って解析した。乳癌細胞株MCF-7では、エストロゲン処理では核内に均一なfociを形成するが、ラロキシフェン処理では、ER-GFPを用いた実験と同様に、ERが核小体に局在することが明らかになった。また、他の臓器由来の細胞株で、ラロキシフェン処理を行ったが、ERの核小体への移行は認められなかった。このことから、ラロキシフェンによるERの細胞内局在の違いが、臓器特異性の要因となる可能性が示唆された。 2. リボゾーム遺伝子の転写に対するラロキシフェン処理の影響 ラロキシフェン処理でERが核小体に移行することが明らかになったが、ERの核小体内での働きに関してはこれまで報告がない。われわれは、リボゾーム遺伝子のプロモーター領域に対するクロマチン免疫沈降(ChIP)アッセィを行った。ERはラロキシフェン依存的に、リボゾーム遺伝子のプロモーター領域に結合することが明らかになった。次に、核小体のリボゾーム遺伝子の転写に対する影響を、pre-rRNA量をRT-PCRで測定することによって評価することが試みた。しかしながら、エストロゲン処理とラロキシフェン処理で、pre-rRNA量に差がなく、今後は、別のアッセイ系での評価が必要と考えられた。
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