1. AIRE KOマウスでのTSH受容体自己免疫反応を我々が以前開発したマウスバセドウ病モデルを用いて野生型マウスと比較検討したところ、わずかなホルモン値と抗体価の上昇が認められたのみで、著変はなかった。そこで、胸腺におけるTSH受容体の発現を検討したところ、AIRE KOマウスにおいて、わずかな発現の低下が見られるのみで、胸腺でのTSH受容体の発現はAIREへの依存が非常に低いことが明らかとなった。以上から、TSH受容体の中枢性寛容に関する実験には、AIRE KOマウスは不適切であることが分かった。 2. 次にTSH受容体KOマウスを用いる実験へ移行した。さらに、真の自己免疫反応を見るために、ヒトではなく、マウスTSH受容体を抗原として用いた。そうすると、野生型マウスはマウスTSH受容体に全く反応せず、マウスTSH受容体に対する寛容は非常に強固であった。しかしTSH受容体KOマウスでは、マウスTSH受容体に対する高い抗体価の上昇がみられた。これは恐らく、TSH受容体の胸腺での発現が消失して、中枢性寛容が解除されたためと考えられる。 以上から、TSH受容体への寛容は中枢性寛容が大きな役割を果たしているが、他の多くの自己抗原と異なり、AIRE非依存性であることが明らかとなった。
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