研究概要 |
既に我々は予備実験において、PC-H253マウスのメス(D1/-,XlacZ/X-)はPCマウスと同様に、週齢を経るに従い血清カルシウム値が上昇し、生化学的な原発性副甲状腺機能亢進症を呈することを確認した。 さらに、90-114週齢のPC-H253マウスにおいて、実体顕微鏡でモノクローナルと考えられる腫瘍の形成を認めた。白矢印の部分がlacZ染色で無染色であった部位で、黒矢印の部分が青色染色の部位であり、共にモノクローナルな腫瘍が形成されていることが示された。90-114週齢のコントロールマウスでは、lacZ染色でモザイク様の染色パターンを示し、ポリクローナルであった(図5B)。また、同部位のCaR免疫染色においては、良好な染色性を示した。一方、同週齢のPC-H253マウスにおいて、lacZ染色で無染色領域を認めた。さらに同部位のCaR免疫染色において、CaRの発現低下を認めた。 以上より、(1)PC-H253マウスはPCマウスと同様に原発性副甲状腺機能亢進症を発症すること、(2)PC-H253マウスでは、90-114週齢でモノクローナルな腫瘍を認めることができること、(3)モノクローナルな腫瘍の形成とCaRの発現低下とに関連があることが示された。 本実験においては、PC-H253マウスに対して混餌にてシナカルセトの投与を行う。投与量は、(1)シナカルセト30mg/kg投与、(2)シナカルセト100mg/kg投与、(3)無投与の3種類の用量とした。シナカルセト投与の開始は14週齢と46週齢とした。これは、早期のまだ副甲状腺機能亢進症を発症していない時期(14週齢)と、既に副甲状腺機能亢進症を発症し、モノクローナルな腫瘍の形成が始まっている時期(46週齢)のそれぞれにおけるシナカルセトの効果を観察することが目的である。 また、同時にH253ヘテロマウスの体細胞突然変異能の検出能力を確認するために、N-butyl-N-(4-hydroxybutyl)nitrosoamine (BBN)の飲水投与により膀胱癌、1,2-dimethyihydrazine (DMH)の腹内投与により大腸癌を発生させ、腫瘍部分をLacZ染色することでモノクローナリティーの評価が可能かを検討している。
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