研究概要 |
まず我々は、モノクローナルな腫瘍発生を組織学的に容易に検出できる、in vivo実験系の開発に着手した。まず、X染色体にLacZ遺伝子を導入したトランスジェニックマウスのメス(X-LacZマウス;X^<lacZ>/X^<lacZ>)を野生型オスと交配し、ヘテロのメス(X^<lacZ>/X^-)を作成する。このマウスに対して、化学発癌による腫瘍形成におけるモノクローナルな腫瘍発生と、LacZ染色性について検討を行った。ヘテロのメス(X^<lacZ>/X^-)の組織では、ランダムなX染色体の不活性化により、メチル化されたX^<lacZ>を持つ細胞と、メチル化されたX^-を持つ細胞とが混在する。体細胞突然変異により増殖優勢となった場合にはモノクローナルな増殖を呈し、体細胞突然変異が生じた元の細胞のメチル化の状態を反映し、青色または無染色の腫瘍形成が期待される。 X^<lacZ>/X^-マウスに対してN-butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosoamine (BBN)の飲水投与を行ったところ、膀胱癌を作成し得た。腫瘍部では、HEで腫瘍と確認できた部位と一致して、LacZ染色では青色または白色の単一色に染色された。これは、病理学的検索でモノクローナルな腫瘍と確認できた部位において、本マウスがモノクローナルパターンを示したことを意味しており、本実験系がモノクローナルな増殖を組織化学的に容易に検出する能力を持つことを示している。 さらに現在、1,2-dimethylhydrazine (DMH)の腹内投与による大腸癌モデルを用いて、本実験系がモノクローナルな増殖を、他の臓器においても検出できるかについて検討中である。また、本マウスと原発性副甲状腺機能亢進症モデルマウスとを交配したマウス(Dl/-, X^<lacZ>/X^-)も生化学的な原発性副甲状腺機能亢進症を呈することが確認できており、シナカルセトの用量試験中である。
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