研究課題
X染色体に異常を有する環状鉄芽球を伴う骨髄異形成症候群症例の骨髄細胞を用いた検討から、X染色体のq13にコードされ、ミトコンドリアにおける鉄排出に関与するトランスポーターであるABC7遺伝子の欠失がミトコンドリア内鉄沈着に関与する可能性を見出した。一方、生体内の鉄代謝において中心的な役割を果たしていることが明らかとなりつつあるヘプシジンと、造血細胞における鉄代謝異常との関連は十分に解析されていない。そこで、今回見出したABC7遺伝子の異常と赤芽球における鉄代謝異常および過剰な鉄による赤芽球障害との関連を明らかにするために、生体におけるヘプシジン定量および過剰な鉄沈着によって生じる生体内フリー鉄定量のためのアッセイ系を確立した。ヘプシジンには3種類のisoform(ヘプシジン-20、-22、-25)があり、ヘプシジン-25が鉄代謝における主要なisoformとされている。しかしながら、それぞれのisoformの役割が十分明らかにされていないことから、同時かつ個々のisoformごとに定量することは重要と考え、液体クロマトグラフィーおよびタンデム質量分析を用いたヘプシジンisoformの定量系を確立した。本定量系では血清のみならず培養細胞上清からも高感度で定量できた。また、血清のトランスフェリンに結合してしいない鉄(NTBI)を液体クロマトグラフィーにより定量する系も確立した。次年度においては、ABC7遺伝子のsiRNAを用いて赤芽球ミトコンドリア内鉄沈着におけるABC7遺伝子の役割を明らかにするとともに、今回確立したヘプシジンおよびNTBIのアッセイ系を用いて、造血細胞や生体全体の鉄代謝に対する影響を検討する。
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Proteomics-Clinical Applications 3
ページ: 1256-1264
分子細胞治療 8
ページ: 3-9