研究課題/領域番号 |
20591109
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
山下 孝之 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (10166671)
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研究分担者 |
大江 良秀 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (80125830)
小田 司 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (10323643)
関本 隆志 群馬大学, 生体調節研究所, 研究員 (20436322)
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キーワード | DNA損傷 / 突然変異 / 損傷乗り越えDNA合成 / Yファミリー・ポリメラーゼ / 分子シャペロン / Hsp90 |
研究概要 |
ゲノムDNAは様々な環境因子や細胞代謝産物などによって恒常的に損傷を受けており、これにより活性化されるDNA損傷シグナルは、DNA修復を促進するとともに、細胞の老化、死、あるいは変異の導入などの応答を引き起こす。分子シャペロンHsp90は種々のシグナル蛋白の構造を制御し、細胞の多彩な機能に影響を与える。しかし、DNA損傷応答におけるHsp90の役割はほとんど判明していない。最近私たちは、Hsp90がY-familyポリメラーゼ(Y-Pol)による損傷乗り越えDNA合成を制御することを見いだし、その分子機構と機能的意義を解析している。 Y-Polは、損傷部位を乗り越えてDNA複製を行うことができるが、変異の導入率が高い。DNA損傷による複製障害剖位へのY-Pol動員機構として、局所で生成されるモノユビキチン化PCNA(Ub-PCNA)に、Y-PolがPCNAおよびUb結合部位を介して結合することが明らかになってきた。しかし、Y-Pol自体の制御に関してはほとんど判っていない。私たちは、Hsp90が代表的Y-PolであるPolηにヒト細胞内で結合し、これを安定化するとともに、PCNA-Ubに結合しやすい構造へ促進することを示す結県を得た。また、UVによる細胞死と変異率の機能的解析結果も、Hsp90がPolηの機能を促進することを裏付けた。Hsp90は正常細胞においても発現しているが、特に蛋白変性ストレスを受けた細胞や腫瘍細胞で活性が亢進する。このような状況で、Polηの機能が亢進し、DNA損傷への耐生や変異率に影響を与える可能性が考えられる。これらの知見は、発がんや腫蕩の悪性化の機構の解明ばかりでなく、Hsp90阻害剤を用いるがん治療の開発にも有用と考えられる。
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