我々は白血病や悪性リンパ腫をはじめとする造血器腫癌の発症機構を明らかにすることを目的に、造血器腫癌の発症に関与する遺伝子群の同定、さらには原因遺伝子群の機能を解析することにより腫瘍発生機構を解明することで、将来的には各疾患に対し特異的で、有効かつ安全な治療法の開発につなげることを研究の目標としている。これまでに、様々な腫瘍において共通に欠矢が認められる6ql6-21領域よりBlimp-1を同定し、さらにリンパ系腫瘍においてBlimp-1遺伝子変異が認められることを明らかにした。この結果より、Blimp-1が6ql6-21領域に存在することが予測される癌抑制遺伝子のーつである可能性が示唆された。 そこでBlimp-1の腫瘍抑制に関する棲能を明らかにするために、下記の解析を行った。まず様々な細胞株にBlimp-1を発現させると、細胞周期が停止することが明らかになった。細胞周期制御に関与する各種因子の発現の解析およびsiRNAを用いた発現を抑制する解析の結果、Blimp-1の細胞周期制御の抑制は主にG1期にはRbを介して、G2期にはp53を介して行われることが明らかになった。またBlimp-1は細胞周期制御に重要な蛋白質に結合することが見出されており、今後さらにBlimp-1の細胞周期に関する制御機構を含めた腫瘍抑制的機能について、より詳細に解析を行う。 また造血器腫瘍では、リンパ球の細胞分化を制御するBlimp-1変異が悪性リンパ腫に認められるよう仁、急性骨髄性白血病ではAMLlやCEBPα、急性リンパ性白血病ではPAX5やIkarosなど、血液細胞の分化を制御する遺伝子の変異が報告されている。そこで、Blimp-1以外にも造血器腫瘍の発症に関与する遺伝子を同定するために、 Blimp-1同様に血液細胞の分化を制御する遺伝子に注目し、遺伝子変異解析を行った。これまでに6種類の遺伝子を対象として遺伝子変異解析を行った。既知のSNPsは認めたが、新たな変異は検出されなかった。継続して、造血器腫瘍における候補遺伝子の変異解析を行っている。
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