研究概要 |
【研究成果の目的】新規合成リン糖誘導体(TMPP/DMPP)の精製と抗白血病効果の作用機序の解明と標的分子の同定を目的とした。【研究方法と成果】(1) リン糖誘導体の白血病細胞の増殖抑制効果;白血病細胞株HL60, NB4, U937, YRK2, NOMO-1, CEM, MOLT4, SUP-B15, K562, Meg-01, SHG3細胞で、TMPPは平均IC_<50>が6.25μM、DMPPの平均IC_<50>は23.7μMであった。(2) リン糖誘導体による白血病細胞の細胞周期に与える効果とアポトーシス誘導効果;白血病細胞株U937細胞において、10μMのTMPPと20μMのDMPPでS期、G2/M期の分画の増加が認められた。さらに、20μMのTMPPで処理40時間後には、80%程度がアポトーシスを起こしていた。(3) TMPPによる細胞周期とアポトーシス関連蛋白質へ及ぼす効果の検討;10μMと20μMのTMPPでFoxM1、Skp2、CDc25B、CyclinD1、Survivin、KIS、Aurora kinase BはTMPPの濃度依存的に発現低下が認められ、CDKlのp27とp21の発現はTMPPの濃度依存的に増加が認められた。(4) TMPPの白血病臨床検体と造血前駆細胞に及ぼす影響;白血病細胞では4μMからCell viabilityの低下が認められたが、正常造血前駆細胞への影響は軽度であった。(5) TMPPの白血病細胞における標的分子の同定;ドッキングシュミレーションソフトを用い、立体構造の判明しているAurora-B, Bcl-2について検討した。Aurora-BとBcl-2はそれぞれ、-20.4と-15.3であり、TMPPとAurora-Bの結合はかなり強力であり、TMPPの直接的な標的分子の一つである可能性が示された。【考察】白血病細胞において、TMPPの作用機序は、細胞周期関連蛋白質の発現制御とアポトーシス関連蛋白質の活性化を誘導することが示された。白血病由来臨床検体においても、TMPPは細胞傷害活性を有し、正常造血前駆細胞への細胞障害作用は軽度であることが示された。TMPPの作用は細胞周期司令塔としてのFoxM1の発現制御を介するとともに、ドッキングシュミレーションの結果からは直接的なAurora-B蛋白質への結合による効果も含まれることが考えられた。
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