研究概要 |
リツキシマブ使用後のCD20陰性化の機序を探るため、検体数を増やし検討を加えた。リツキシマブ使用後にCD20が陰性化した細胞株RRBL1、WILL2および、同症状を示した患者腫瘍細胞を用い、合計11例におけるCD20発現および遺伝子解析を行った。RT-PCR法によるCD20mRNA発現解析では、検討された6例で発現量が低下しており、1例では発現が確認できなかった。またCD20蛋白の発現は、フローサイト解析、免疫染色、ウェスタンブロット法のいずれにおいても低下を示した。細胞株を用いたMS4A1遺伝子プロモーター部位のメチル化解析では、発現に関与すると考えられる有意なメチル化部位は確認されなかった。MS4A1遺伝子配列解析では、検討された7例中2例においてCD20コーディング部位の変異が確認されたが、クローン数が少なく臨床的意義は否定的であった。また、DNMT阻害剤などを用いたCD20の発現誘導実験を施行した。Ly10や一部の臨床検体においてRRBL1と同様の発現誘導効果が確認されたが、WILL2においては誘導効果が確認されず、細胞ごとに陰性化メカニズムが異なる可能性が示唆された。また、誘導前後のmRNAを用いてマイクロアレイ発現解析を行い、ENO1, PHF7などCD20同様に発現が誘導される因子を確認した。これらの発現ベクター及びCD20プロモーターレポーターを用いて転写アッセイを施行したが、この系において転写誘導効果は確認されなかった。現在他の細胞株のプロファイルと比較し、CD20発現により関連の深い因子を探索中である。 また、リンパ腫細胞のCD20発現を生体内で経時的に確認するため、MRIにより描出可能な標識抗CD20抗体を開発している。現在、金担持処理酸化鉄ナノ粒子結合リツキシマブの作成が進んでおり、ヒトB細胞性腫瘍移植マウスモデルにおける応用を検討している。
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