研究課題
初発のB細胞性悪性リンパ腫(BCL)において、CD20の発現異常を認める症例が存在し、リツキシマブ治療抵抗性との関連が示唆されている。中でも、CD20蛋白の発現が免疫染色(IHC)にて陽性、フローサイト解析(FCM)においては陰性を示す症例が存在し、リツキシマブ治療の是非に興味が持たれている。この表現形を示す7症例のびまん性大細胞型Bリンパ腫患者より得られたリンパ節生検材料を用いて、CD20 IHC(+)/FCM(-)に関与する分子機序の解析と、リツキシマブに対する反応性に関する検討を行った。CD20遺伝子のコーディング配列に、変異は確認されなかった。ウェスタンブロット法により、CD20蛋白の発現が陽性コントロールに比べて概して低いことを確認した。定量的RT-PCR法では、CD20 mRNAの発現は陽性コントロールに比べ約10倍有意差を持って低いことを確認した。興味深いことに、蛍光標識したリツキシマブを用いたFCMとlive cell imaging解析において、腫瘍細胞とリツキシマブとの結合が確認された。しかし、その結合量は陽性コントロールに比べて有意に低かった。抗CD20 B1抗体と腫瘍細胞との結合は確認されなかった。これらの結果、CD20 mRNA発現量の低下がIHC(+)/FCM(-)の表現形に関与していること、リツキシマブの使用が必ずしも否定されるものではないということ、の2点が示唆された。これらと平行して、鉄ナノ粒子を結合したリツキシマブの開発を連携研究者らと行ってきた。現在までに試作薬剤が完成し、リンパ腫細胞株移植マウスを用いたMRI in vivo imaging解析を開始した。今後、CD20の発現量の異なるBCL細胞を用いて移植モデルを作成し、リツキシマブのin vivoにおける結合状態などについて検討をすすめていく必要がある。
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血液・腫瘍科
巻: 61(1) ページ: 35-44
血液フロンティア
巻: 20(S-1) ページ: 157-165