本研究の目的はPML機能の発現に重要であるPML NB形成機構の解明にある。本年度はPML NB形成におけるPMLアセチル化の重要性について検討した。具体的にはPMLがヒストンアセチル化酵素であるp300によりアセチル化される事を証明しそのアセチル化部位を同定した。また細胞内でのPMLアセチル化はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるトリコスタチンA (TSA)の刺激により増強される事も見いだした。更に検討を進めた結果、PMLアセチル化はPML NB形成に必須の翻訳後修飾であるPML SUMO化を増強する事でPML NB形成に重要な役割を果たしており、TSAのアポトーシス誘導機序としてPMLアセチル化→PML SUMO化→PML NB形成増強→アポトーシスというメカニズムが考えられる事を示した。これはPMLの機能調節に対する理解を深めると供に、有用な抗がん剤候補と考えられながらその作用機序の多くが不明であるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の作用機序の一部を解明する事に繋がるものである。これらの結果を論文にまとめThe Journal of Biological Chemistry誌に発表した。 更にPML SUMO化によって形成されるPML NBは他の蛋白のSUMO化の場としても重要であるという仮説のもとsiRNAによりPMLをノックダウンと抗体アレイを組み合わせた手法でPML依存性にSUMO化される蛋白の網羅的検索を行った。PML依存性にSUMO化される蛋白は検出されなかったが、PMLノックダウンによりSUMO化が増強する、すなわちPMLによりSUMO化を抑制されている蛋白の候補としてGATA-2、NCoRが見いだされた。両者ともにPML NBの構成因子である事が知られており、今後これらのPML依存性SUMO化抑制とその意義について検証していく予定である。
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