本研究の目的はPML機能の発現に重要であるPML NB形成機構の解明にある。本年度はPMLが関連する融合遺伝子であるPAX5-PMLによるPML NBの破壊機構について調べた。PML関連融合遺伝子としてはPML-RARaが知られており、これはPML NBを破壊する事でPMLの機能を阻害し抗アポトーシス活性をもたらす事で急性前骨髄性白血病の発症に関与しているといわれているが、PML NB破壊のメカニズムに関しては不明な点が多い。PAX5-PMLはPML-RARa以外に始めて発見されたPML関連融合遺伝子で、急性リンパ芽球性白血病で発見された。今回の研究で、PAX5-PMLはリンパ球分化を司る転写因子であるPAX5のドミナントネガティブ体としてその機能を阻害するとともに、PML NB形成に必須の翻訳後修飾であるPMLのSUMO化を阻害し、PML NBの形成を阻害する事が発見された。更にPML-RARaにより破壊されたPML NBを再構成する事で知られる急性全骨髄急性白血病の治療薬である亜ヒ酸は、PAX5-PMLにより破壊されたPML NBの再構成も誘導し、PAX5-PMLによりもたらされたアポトーシス抵抗性を克服し、PAX5-PML発現細胞に効率的にアポトーシスをもたらす事が明らかにされた。この研究により白血病におけるPML NBの破壊機構の一端が解明されるとともに、一部の急性リンパ芽球性白血病に亜ヒ酸が有効である可能性が示唆された。これらの成果を国内、国外の学会で発表するとともに、論文にまとめ海外雑誌に投稿中である。
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