研究概要 |
本研究の最終目標は、原発性骨髄繊維症における破綻した造血微小環境を脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)を用いて再生させることであるが、病的状況下での応用を検討する前に正常状態下でADSCが造血微小環境を構築できるかを確認する必要がある。前年度にマウスADSCの造血支持能力は、マウス骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)と比較してin vitro, in vivoともに優れていることを確認した。そこで本年度は、その安全性について確認した。投与時の安全性については、造血支持能力を保持する細胞数(5x10の5乗)を投与しても急性毒性は、認められなかった。腫瘍形成に対する検討においては、マウスADSCを骨髄内に移植後6ヶ月を過ぎても腫瘤の形成は認められなかった。次に、ヒトADSCとヒトBMSCを樹立し、血液幹細胞支持能力を比較した。In vitro coculture assayでは、ヒトADSCは、ヒトBMSCよりも有意にCD33およびCD13の表面抗原形質をもつ顆粒球を増加させることが、確認された。またsemisolidメチルセルロースを用いたprogenitor assayでも、ヒトADSCは、ヒトBMSCよりも有意にコロニー数を増加させることが明らかとなった。しかしながら両群間でCFU-G,CFU-M,BFU-Eの比率に相違は、なかった。以上のことより、ヒトADSCは、ヒトBMSCと代替となるばかりでなく、造血支持という観点からは優れた細胞ソースであると考えられた。
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