研究概要 |
慢性骨髄性白血病(CML)の治療はABL阻害剤イマチニブの登場により治療成績が向上したが、イマチニブ投与によっても造血幹細胞分画に白血病細胞が残存する。この研究では、イマチニブ治療後の幹細胞における残存を高感度に検出し、幹細胞に対する効果を評価するとともに、白血病幹細胞を標的とした治療を目指して研究を行った。イマチニブ初回投与となる初診時慢性期症例は、治療前、イマチニブ投与開始後3カ月、6カ月、1年の骨髄検体を、イマチニブ継続中の症例については、1年以上内服を継続している症例の骨髄検体を用いた。セルソーターを用い造血幹細胞(Thy-1^+のlong term HSCとThy-1^-の2分画)・前駆細胞(CMP:骨髄球系共通前駆細胞,GMP:顆粒球単球系前駆細胞,MEP:巨核球赤芽球系前駆細胞の3分画)の5分画を分離し,リアルタイムPCRによる残存腫瘍(MRD)の定量を行い、幹細胞における残存白血病細胞を解析した。初診症例は、12例について継続的な解析が可能であった。3カ月後における予測残存量はHSC/Thy1^+>MEP>CMP>HSC/Thy1^->全単核球>GMPの順に多く認められた。6カ月後では、CMP≒MEP≒HSC/Thy1^+>HSC/Thy1^->GMP>全単核球の順であった。HSC/Thy1^+分画におけるMRDは、3カ月後で治療前の1/5、6カ月後では1/25に減少した。この結果から、イマチニブ投与後の前駆細胞、幹細胞分画におけるBCR-ABL陽性細胞の減少は治療開始後早期から認められ、HSC/Thy1^+分画で最も残存率が高いことがわかった。一方,イマチニブ長期投与症例は22例を解析し、ほとんどの症例で分子遺伝学的寛解を得た後も幹細胞に白血病細胞が残存していた。従来の全骨髄を用いたリアルタイムPCR法で感度以下になる症例でも、幹細胞、前駆細胞分画で高感度に残存腫瘍を検出が可能で、前駆細胞と比較すると幹細胞により多くの残存を認めた。また、別の角度から、CML幹細胞を評価するため、Hoechst染色を用いたSide Population(SP)分画の解析を行った。慢性期CML診断時の骨髄検体において、SP分画ととCDマーカーを比較したところ、SP分画と幹細胞が豊富であるとされるCD34+38-に強い相関を認めず、治療後のBCR-ABL陽性細胞の残存についても、SP分画における有為な残存傾向を認めなかった。
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