研究概要 |
我々は平成20~22年度科学研究費基盤(C)を受け、抗体結合型β-カテニンsiRNAを用いた多発性骨髄腫に対する新規治療法の開発に関して、平成22年度は以下の検討結果を得た。 1) リボソームを用いた抗体結合型のDDS、および抗体結合型のsiRNAの作製を行ってきた。抗体結合型リボソームは、より血中での停滞時間を長くすることを目指して、従来のカチオニックリポソームだけではなく、アニオニックリポソームを用いてsiRNAの内包実験を行っている。また抗体結合型siRNAについては、オリゴRNAのSH基と抗体Fc部位のSH基を結合し、抗体とオリゴRNAの結合に成功した。この結果を踏まえ、細胞内への抗体結合型siRNAの導入実験を行っている。今後抗体結合型β-カテニンsiRNAのin vitro、in vivoにおける効果を検討していく。 2) β-カテニンsiRNAに皮下骨髄腫モデルマウスにおける治療効果の報告(Clin Cance Res, 2009)を踏まえ、米国製薬企業から共同研究のあった新規Wnt/β-カテニン経路阻害剤の前臨床試験を行い、正所性担がんモデルマウスにおける治療効果を明らかにした(Exp Opin Ther Targets, in press;投稿中)。本lead compoundは現在、臨床試験向けに構造展開され、臨床試験準備中である。 3) がん幹細胞が存在すると考えられる低酸素環境に適応した骨髄腫細胞株を5株樹立した。これらの株を用いて正所性モデルを作製するとともに、Wnt/β-カテニン経路の活性化を検討している。これらの細胞、およびモデルを用い、抗体結合型β-カテニンsiRNAの治療効果を検討する。 これらの成果により、今まで多発性骨髄腫といった造血器腫瘍には適応・開発が難しいと考えられていたRNAi療法による新規治療の開発、および骨髄腫幹細胞に対するRNAi療法の開発が進められる。
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