研究課題
BMI-1は造血幹細胞から前駆細胞に発現し自己複製に重要な役割を果たしていると考えられている。われわれは既にBMI-1の発現は骨髄異形成症候群と急性骨髄性白血病の予後に関与することを明らかにしている。BMI-1の発現調節に関与する転写因子の同定や調節機構を明らかにするための研究の一つとして、慢性骨髄性白血病(CML)について研究を行った。CMLは造血幹細胞の腫瘍であり、骨髄または末梢血CD34陽性細胞におけるBMI-1の発現をフローサイトメトリー(FCM)により評価したところ、正常対照に対して慢性期、加速期、芽球期の順に高値であり、BMI-1蛋白はCMLにおける病勢進行に強く関与しているものと推測された。BMI-1 mRNAのレベルにおいては、対照に比しCMLでは有意に高値であったが病期間での差はなかったことから、mRNAの発現とその蛋白の発現の差異は病勢進行に伴う転写後修飾によるものであると考えられた。そこでCML細胞株とBCR-ABL導入HEK-293細胞をプロテアソーム阻害剤(LLnLあるいはMG132)の存在下で培養し、ウエスタンブロット法とFCM法により、BMI-1の発現を評価した。BMI-1蛋白は2つのプロテアソーム阻害剤により発現強度が増強されたことから、CMLではBMI-1蛋白はユビキチン-プロテアソーム系により蛋白発現が制御され、特に芽球期において蛋白が分解抑制されていることが強く示唆された。以上の結果から、BMI-1蛋白が病勢移行の分子マーカーの一つとして有用であり、またこの蛋白が分子治療標的として考えうることが示唆された。
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