研究概要 |
B細胞性悪性リンパ腫は高齢者では再発しやすく、び慢性大細胞型における5年無病生存率はリツキシマブが使用できる現在でも、50-60%前後にとどまる。我々は、ポリコーム遺伝子群BMI-1が、急性骨髄性白血病の独立した予後因子であることを報告した(Leukemia,2007)。そこで、悪性リンパ腫細胞におけるBMI-1の発現と抗癌剤の耐性に着目した。悪性リンパ腫細胞株(HTおよびRL)にBMI-1を導入し、多種に及ぶ抗癌剤に対する反応性を検討した。Etoposideおよびoxaliplatinに対してBMI-1高発現HTおよびRL細胞は耐性化傾向を示した。ところが、2種類の悪性リンパ腫細胞株はBMI-1の発現量には影響なく、irinotecanに対し耐性であった。次に、BMI-1が抗癌剤耐性を誘導する機序を検討した。EtoposideおよびoxaliplatinはSurvivinを標的とするため、Survivin蛋白の発現を検討した。BMI-1を強制発現したHTおよびRL細胞はSurvivin蛋白の発現がenhanceされていた。興味深いことにSurvivin mRNAの発現は変化なく、post-translationalな制御によって起こっているものと考えられた。次に、抗癌剤耐性であった悪性リンパ腫患者由来3検体と抗癌剤感受性であった悪性リンパ腫患者由来3検体におけるBMI-1およびSurvivinの発現を検討した。興味深いことに抗癌剤感受性悪性リンパ腫細胞はBMI-1およびSurvivinの発現が弱く、一方、抗癌剤耐性悪性リンパ腫細胞ではBMI-1、Survivinの発現は強かった。以上の解析結果は、BMI-1が抗癌剤耐性機構にも関与していることを示唆するものであり、BMI-1が抗癌剤の標的分子となりうることを示している。
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