研究概要 |
細胞周期の分裂期は様々なセリン・スレオニンキナーゼがその発現を時間的、空間的に変えながら厳密に制御しているが、その機能破綻が染色体の不安定性をもたらし、白血病の発症、細胞増殖に関与していると想定した。そのなかでも本年度は広く分裂期に起こるイベントに関与しているpolo-like kinaseに注目して研究を行った。Polo-like kinaseは正常造血幹細胞と比べて急性骨髄性白血病(AML)細胞や急性リンパ芽球性白血病(ALL)細胞で有意に高発現をしており、白血病の発症への関与が示唆された。次に、AML細胞株NB4においてpolo-like kinaseをRNA干渉で阻害するとその細胞増殖はコントロール細胞と比べて有意に抑制された。Polo-like kinase特異的阻害剤にNB4細胞やその他のAML,ALL細胞を暴露してもその細胞増殖は顕著に抑制され、更なる研究でそれらの細胞にはアポトーシスが誘導されていることが明らかとなった。更に、急性白血病の治療に現在使用されている抗がん剤とpolo-ike kinase阻害剤を共に白血病細胞に投与すると、それぞれ単剤を投与した場合と比べて相乗的にその細胞増殖は抑制されアポトーシスが誘導された。抗がん剤のなかでもチュブリン重合阻害剤であるビンクリスティンと併用するともっとも強力に相乗効果が誘導できた。以上よりpolo-like kinaseは白血病治療において有用な治療標的分子となり得る可能性が考えられた。
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