研究概要 |
本年度行った研究にて、申請者は以下の知見を得た。 (1)小児ALLにおける、TNF遺伝子多型の解析。 214例の小児ALL検体よりDNAを抽出し、tumor necrosis factor(TNF)遺伝子に関し、その遺伝子産物の機能・活性に違いを生じるSNPsに特異的なプライマーとPCRサーマルサイクラーを用いてSNPs部分を増幅し、その産物をSNPs特異的な制限酵素で切断した後、サブマージ・アガロース電気泳動検出セットで解析することにより遺伝子多型の解析を行った。その遺伝子多型と、各種臨床情報の関連を解析した結果、高リスクと考えられる遺伝子多型は年齢が高い患者に有意に多く認められた(p=0.024)。しかし、TNF遺伝子多型は、白血球数、性別、化学療法反応性、および予後とは有意な関係を示さなかった。以上より、TNF遺伝子多型のインパクトは限定的である。 (2)多発性骨髄腫(MM)における各種癌抑制遺伝子プロモーターのメチル化の検討。 MM49例を対象に、14遺伝子について、methylation-specific PCR法を用いて、DNAメチル化パターンを解析した。p16,DAPK,FHIT遺伝子において、25%以上のメチル化が認められたが、p21,p27,cyclin D2遺伝子ではほとんどメチル化が認められなかった。これらの結果を、以前解析した小児急性リンパ性白血病(ALL)の結果と比較した。p21,p27,cyclin D2遺伝子はMM,ALLともにメチル化がほとんど認められなかった。また、DAPK,FHIT遺伝子は、MM,ALLともに高頻度のメチル化が認められた。一方、p15,RARβ遺伝子のメチル化はALLでのみ認められた。以上の結果より、MMとALLは発症機序が一部共通であると考えられた。
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