研究概要 |
白血病における癌抑制遺伝子プロモーター部分のメチル化の解析は、その発症メカニズムを理解する上で極めて重要である。本年度行った「小児急性リンパ性白血病(ALL)における各種癌抑制遺伝子プロモーターのメチル化の検討」という研究にて、申請者は以下の知見を得た。 95例の小児ALL検体を用い、methylation specific PCR法にてp14,p15,p16,RB,hMLH1,MGMT,APC,RAR beta,DAPK,FHIT,p21,p27,cyclin D2,SHP1遺伝子の異常メチル化を解析した。その結果、RAR beta(33%),FHIT(28%),p15(25%)において高頻度のメチル化が認められた。一方、p14およびp21遺伝子には、異常メチル化は全く認められなかった。69%の症例において、少なくとも1つの遺伝子のメチル化が認められた。いくつかの遺伝子のメチル化は同時に起こっておりその関係を調べた結果、p15のメチル化は、p16、MGMT、およびRAR betaのメチル化に関連していた(それぞれP=0.049、P=0.004、P=0.013)。メチル化と臨床情報の関連を調べた結果、MGMTとp16のメチル化は高い年齢(それぞれP=0.01とP=0.03)と関係していた。p15とSHP1のメチル化はT-ALLに多く認められ(それぞれP=0.02、P=0.01)、一方DAPKのメチル化はprecursorB-ALLに多く認められた(P=0.01)。複数遺伝子のメチル化を有する患者はT-ALLで、中間または高リスクに分類された(それぞれP=0.004とp=0.03)。以上の結果から、遺伝子異常メチル化は小児ALLの臨床・病理的特徴と関連している事が明らかになった。
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